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──黒崎課長が、私の住む家にやって来た。 黒崎課長が居間に入った所で、私は振り向いた。 背伸びをして飛びつくような感じで、黒崎課長の首にしがみついた── ***** それから月に二~三度、木曜日に黒崎課長は私の住む家にやって来る。 その日は、毎週奥さんの習い事があって、実家に菜穂ちゃんを預けて外出する。 そのまま夕飯も実家の方で済ませ、ゆっくりと過ごしておじいちゃん、おばあちゃん孝行をしてくるそうだ。 明奈のおばあちゃん家がある路地には、家が八軒程建っていた。が、今では半分以上が、空き地や空き家になっている。 ご近所さんは、老夫婦だけの家と、おばあさんが一人で暮らす家。 夜も早い時間に、家の中の灯りが消えている事が多い。 おばあちゃん家の駐車場は、ちょうど家の影になるような所なので、どんな車が駐車されているのか見えずらい。 家の周囲の状況がわかった黒崎課長は、外で会って誰かに見られる危険を冒すよりも、この家で会う事を選んだ。 私は“過ち”を続ける事を選んでしまった…… 玲子さんとは、できるだけ二人だけで話さないようにした。 鋭い玲子さんには、黒崎課長との事がすぐにバレてしまいそうに思えたから。 でもそれも、たいして効果はなかった。 黒崎課長との“過ち”から、三ヶ月も経たないうちに美冬に呼び出された。 悪い予感がしながら、金曜日の夜、なじみの居酒屋に行くと玲子さんもいた。
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