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自分の考えとか思いを通す事を、私は慣れていない。でも、精いっぱい私の“想い”を、玲子さんと美冬に伝えようと思った。 「あの夜、自分の気持ちに気付いてしまった。お酒の力はあったけど、私は一度も黒崎課長に抵抗しなかった。それよりも、溢れてくる想いにどうしようもなかったの」 膝の上の手を、ギュッ!と強く握った。 「一度は、自分の想いに蓋をしたはずだった。でも、もう溢れてた……私は、黒崎課長への自分の想いで、溺れそうだった!」 泣くまい!と思っていたのに、涙が一筋、頬を伝った。 「それ以上は、何も望まない。黒崎課長と過ごす、わずかな時間だけ……」 もう涙を流さないように、目の奥に力を入れた。視線を逸らさずに、美冬と玲子さんをもう一度見つめる。 「ハァ~……」と同じようなタイミングで、美冬と玲子さんが大きく息を吐いた。 玲子さんはジョッキを持つと、グイグイッと生ビールを一気にあおった。「プハ~」とまたもや大きく息を吐く。 いつもクールな玲子さんらしからぬ行動に、私と美冬は目が点になる。 ドン!とジョッキを置くと、キッ!と私を見た。 視線の鋭さに、ビクッ!として固まる。 「どんなに繭子の想いが一途でも、あんたたちの関係は所詮“不倫”なの!黒崎課長の奥さんが気付いたら、あんたは訴えられる事だってあるの!」 内容を憚って、声は抑えてあるが、玲子さんの強い思いは伝わってくる。 「…はい……」 私はコクンと頷いた。 「……黒崎課長の事は、益々嫌いになった。応援は、しない!……でも……寂しい時には、飲みにぐらい付き合ってあげる」
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