13.きみと生きたい

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絶対、そう言うだろうと思っていた。 だからこそ私は芳に問うのだ。 「…どうして?」 「だって、分かるだろ? 俺には…先が無い。 結婚も出来ないし、子供も作れない。 そんな男と付き合っても意味無いよ」 私は低くしゃがんで 芳と目線を合わせながら話し続ける。 「意味は有るよ。 芳の人生が残り僅かなら、 一分一秒でも長く一緒にいたい」 「バッ、バカ言うなって。 終わりが見えているのに、 わざわざ苦労を背負うこと無いんだ。 俺、雅には絶対幸せになって欲しいから」 不思議と涙は止まっていて、 ハッキリとその姿が見えた。 たぶん私は、 この時の芳の表情を一生忘れないだろう。 困っているような、 それでいて嬉しそうなその表情を。 「分かってるクセに …私の幸せは芳の傍にいることだって。 どんな結果になっても絶対に後悔しない、 だから私を幸せにしてよ。 病気になっても、芳は芳でしょ? 芳にだって幸せになる権利は有るんだよ。 …ねえ、私がうんと幸せにしてあげる。 死の恐怖なんか忘れるほど、 毎日楽しく暮らそう。 辛くなったら一緒に泣いてあげる。 ひとりになりたかったら、そう言って。 私になら何でも言えるでしょ? 芳も幸せになっていいんだよ!」
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