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破綻のない結婚-前編ー
「おやすみ」がこんなに怖かったことなんて無かった。
毎日朝が来るとリセットされて自分だけの思い出だけが増えていく。
そこに寂しさを感じても、君の手を離す気にはなれなくて…。
君を抱きしめて眠り、君より早く起きてベッドの上から降りて涼しい顔で君の寝顔を見ながら横の椅子に座る。
君が目を覚ましたら、「おはよう。」と声をかけて君の病気や現状を伝えよう。
それからぎこちない朝食をとって、君が付けた過去の日記を数枚見せよう。
君が私を忘れてしまったことに、罪悪感を感じ始めたら君の好きだったDVDを一緒に見よう。
涙ぐんだ君の肩を抱きながら、眺める何十回目の映画もエンドロールになれば君は、はにかんだ笑顔を見せてくれる。
その優しい笑顔に口づけを落とすと、自分たちの出会いについて問われる。
毎回違う映画を基にした出会いを本当のことのように伝え、遅い昼食へ。
少し、以前の明るさを戻した君とドラマの再放送を見ながら、どれほど愛し合った夫婦か伝える。
そして君が自分にどんなに愛されていたか。
何度か君が他の男の所へ行こうとしたこともあったけれど目を瞑ったこと。
それでも最後には自分に戻ってきてくれたこと。
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