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3月も20日を過ぎた頃、
俺は窪田と安いだけが取り柄の小汚い飲み屋にいた。
俺は親父の学校で教員として働く事が決まり、
窪田は保険会社に就職が決まった。
さあもうお開きと言う時、突然窪田が神妙な顔で聞いてきた。
「あのさ、森田。お前、ホントに椎名さんと何もなかったの?」
俺が猪口を落としそうになったのを、多分窪田は見てただろう。
「なんで?」
「椎名さんサークルの合宿、途中で帰っただろ?
あのあとだろ、サークル辞めたの」
「俺は関係ないよ。」
「そうかーぁ?」
窪田は何か知っているような、いやらしい語尾の上げ方をした。
「2年も前の話だろ。
椎名先輩は親が危篤だから帰ったんだぞ確か。
家の事情じゃないのか?」
目が覚めたら俺は一人で高跳び用マットの上で寝ていて
ゆり子は消えていた。
それから一度も会っていない。
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