一匹の魔女と僕。

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 白い手が僕に近づいた。 「……汚れる」  僕は言った。  けれど魔女はお構いなしに僕の頬に触れた。  お構いなしに頭を撫でた。  優しく、抱き締めた。  ──その瞬間、一匹の魔女は僕の神様になった。 ────  あの日から十数年経った今。  僕は魔女と同じ大きさになった。  魔女はまだ僕を小さく見ている。 「いい男になってきた」  ふと魔女はそう言った。  僕はあの日忘れた笑顔で答える。 「──綺麗な神様がそばにいるからです」  魔女も遅れて笑う。 「おいで。私の弟子」  僕の神様は今日も僕を優しく抱き締める。
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