一匹の魔女と僕。

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 一匹の魔女は言った。  ゴミのような僕に言った。 「拾うのが魔女で悪いんだけれど」  そう言った魔女は綺麗な黒い手袋をしゅるりと脱いだ。  僕は脱いでなくても黒い手だった。  家も親もない、誰もいない手だった。  魔女は厭に白い手だった。  僕とは違う──僕を蔑む人間と違う手だった。  僕の前で、魔女の後ろで街が焼ける火が上がった。  空まで赤かった。 「怖い?」  魔女が聞いた。  僕は首を横に振った。  魔女の目がまん丸になった。 「……そう」  魔女がしゃがんだ。  僕の二個分大きな魔女だった。
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