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目の前にいるペルセポネは無論夢だろう。しかしその前にこなしていた仕事も夢だったのだろうか。記録に目を通している時にヒュプノスの放つ睡魔の気にやられてしまったのだろうか…あるいはもっと前から既に自分はヒュプノスに眠らされていたのかもしれない。
だが、そんなことはもうどうでもよかった。
冥界の王さえ、結局眠りの欲求には敵わなかったのだ。すでに自分の身体はヒュプノスの術中に落ち、眠ってしまっている。ならば、抵抗したところでそれはもはや何の意味もなさない。それに…
「オネイロスの見せる夢の中ならば、私はそなたとこうしていつでも共に過ごせるのだな…」
ハデスは夢の中のペルセポネに言われた通り彼女の膝の上に頭を乗せて横になると、そのまま心地よい微睡みに身を委ねた。
きっと次に目を覚ます時には、ハデスは清々しい気持ちで目覚めることだろう…。
「…おやすみなさい、ハデス。どうかひととき、幸せに満ちた安らぎの夢を。」
ペルセポネは久々の夫の穏やかな寝顔を見ながら、そっとその額に口付けを落とした…。
了
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