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えーと。サトミは首を傾げる。怖がるのは、わたしの方なのでは? 一応こっちは人間の女の子、そっちは竜だ。攻撃力はわたしよりもあるでしょうに。鱗、僕の、剥がす?」
サトミは頭を振る。
「しない、しない」
「じゃ、何で、来た?」
「夜に遠吠えが聞こえてきて、町の人たちは眠れなくなってるの。てっきりこの山にいる犬が吠えていたのかと思ってたんだけど、あなたが吠えてたの?」
「うん。それ多分、僕」
「どうして?」
「最近、眠れない。眠るの下手。嫌な夢、見る、から」
「どんな夢を?」
「捕まる、夢。剥がされる、夢。取られる、夢」
「え……」
それって、もしかして。サトミはドキッとして、左手首にしているブレスレットを見た。この鱗がどこで、どうやって手に入れられたものかは知らない。それにきっとブレスレットになって町長の手に渡るまで、たくさんの人たちが関わってきたはず。悲しい想いをした竜や、恨みを買われた人がいる、曰く付きのものかもしれない。
「あなたは酷いことをされたの?」
「逃げてきた」
「そう……」
◇◇◇
竜の話を聞いたサトミは、とぼとぼ町に帰った。
そして役場で町長に話す。
「何と、そんなことがあったのか」
「そうなんです。いたたまれなくて」
サトミはブレスレットを町長に返した。
「竜が悪い夢を見ないようにするため、何か手はありませんか?」
「うむ。では夢兎を頼ろう」
「夢兎を?」
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