竜のための眠り歌

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竜のための眠り歌

◇  人間が気づいたのは、きっと他の動物たちよりも後で、もしかしたら最後だったのかもしれない。  夜中の一時を回った頃、遠吠えが聞こえた。  それは日を追うごとに大きな吠え声になっていくという傍迷惑なものであり、町に住む人々の安眠を妨げるほど。最初の遠吠えは小さくて、人々はまったく気にしていなかったというのに。  そこでこの問題を解決するために、町長は集会を開いた。 「遠吠えはこの町の西にある山から聞こえてくるようだ。きっと山犬の類であろう。元気のいい若者よ、山犬を諫めにちょっくら山へ出掛けていっておくれ」 「えー」  集会場にやって来た若者たちは皆、問題の解決に積極性がなく、顔を曇らせている。 「面倒だなんて言わないで」 「いや、面倒だと言うより、危険を伴うのでは?」 「だからこそ元気がある若者に頼むのだ」 「ギャラは出るんですか?」 「そんな予算はない」  町長はきっぱりと言い放った。 「それじゃあ誰も行きたがらないのでは」 「たまにはボランティアをせい、若者よ」  というわけで、集会場に来ていた若者たちは渋々頷いた。     
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