143人が本棚に入れています
本棚に追加
俺と同じように、自分の両手で俺の両頬を包んでいる美羽。
見つめあって、一気に体温が上がった。なんとも言えない、面映ゆさを感じる。
自分の感情が制御できなくなりそうで、俺は美羽の頬から手を離しながら、一歩退いた。
とたんに真冬の冷たい風が、頬を冷やした。
「美羽、これ、ありがとう!おやすみ。また明日!」
手に持った紙袋を掲げてから、ようやく素直にお礼が言えた。
「ヒロくん、送ってくれてありがとう!気を付けて帰ってね。おやすみ。また明日!」
美羽が笑って手を振った。
自転車を止めた美羽が、玄関扉の中に消えるまで見送った。美羽は、最後まで笑って手を振っていた。
──俺の心に、どしゃ降りの雨を降らせるのも、温かい陽の光を当てるのも、全部、美羽なんだ……
俺はいったいいつまで、君に、失恋し続けるのだろうな……
白い息を吐いて、真冬の町を走り出した──
END
最初のコメントを投稿しよう!