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今日は、暖かい日だ。今日みたいな日を『小春日和』というのだろう──
赤いリボンのついた箱を見て、そんなどうでもいい事を思った。
机の横に掛けたピンクの紙袋を開くと、その箱を入れる。中にはすでに、きれいにラッピングされた箱や袋がいくつか入っていた。
それらを目にして、俺は小さく溜め息をついた。
昼休憩が終わるまで、後五分。俺は、弁当箱に残っているご飯をかきこんだ。
「広樹、まだ飯食ってたのか」
「ああ」
同じクラスで、同じサッカー部の牧野に声をかけられて短く返した。
「待ってたのに、おまえなかなか来ないから。……もしかして、あの後も誰か来たのか?」
俺の隣の席に腰掛け、マキ(牧野はサッカー部でそう呼ばれている)は俺の顔を覗きこんできた。
「……ああ」
マキから顔を背けながら、同じ言葉を繰り返した。
「っ!美羽ちゃんの言ってた通りだ。『なぜかヒロくん、モテるから。すぐには来られないと思う』て。で、チョコ何個もらった?誰にもらった!?」
妙にテンションの高いマキを一瞥して、俺は最後の卵焼きを口に放りこんだ。
今日は二月十四日、バレンタインデー──
朝、登校してきたら、高校の前で他校の女子から声をかけられ、チョコレートを渡された。
それから昼休憩まで、同級生、先輩から呼び出され、チョコレートを渡されている。
昼休憩はいつも、隣のクラスで幼なじみの美羽とみちる、マキの四人で弁当を食べている。
が、昼休憩が始まったとたん女子から呼び出され……昼休憩の間に、四人の女子からチョコレートを受け取る事になった。
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