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……俺はずっと、傍で見てきた。匠くんを想う美羽の笑顔も、涙も……
だから俺は、美羽への気持ちに気付かないようにしていたんだ。
『美羽が好きだ』と気付いたとたん、俺は失恋した。
そしてそれは今も、ずっと続いている。ふとした時に、『美羽が好きだ』と実感する。
そのたびに、その想いがどうしようもないものだとも、自分に言い聞かせる。
『失恋継続中』だ──
*****
夕食の後、自室に戻りゴロンとベッドに横になった。
午後からも女子に呼び出され、何となく慌ただしいまま一日の授業を終えた。
放課後も、そんな感じで……
結局、美羽に会えないまま家に帰ってきてしまった。
「明日かな……」
俺のバレンタインデーのチョコチップクッキーは、明日渡されるんだろうか。
美羽から貰う物だったら、いつでも、何でも構わない。
ただ……俺が『ただの幼なじみ』だから、バレンタインデーのチョコも、いつ渡しても構わない……そう美羽に言われたような気がして、胸がキリッと痛む。
こんな感情、今さらなのに……
「広樹ー!お風呂、入っちゃいなさい!」
「わかった!」
階下から母さんの声がして、とりあえず答えた。
ジーンズのポケットに突っ込んでいたスマホが、震え始めた。
着信相手を確認して、妙に焦りながらスマホをタップした。
「もしもし!」
『ヒロくん、今大丈夫?』
美羽の柔らかい声が、耳に届く。
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