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「うん。どうした?」
話の内容は想像がつくのに、いつもより素っ気ない声が出てしまった。
『ヒロくん、家にいるよね?』
「ああ、自分の部屋」
『よかった~!今、ヒロくん家の前にいるの!』
「はっ!?」
カーテンを開け家の前を見下ろすと、スマホを耳に当てたまま、美羽が手を振った。
『ヒロく~ん!』
時間を確認したら、八時半を過ぎている。
「おまっ…ばっ!すぐに降りる!」
通話を切ると、スマホを再びジーンズのポケットに突っ込んだ。上着を羽織りながら、部屋を飛び出す。
階段を駆け降りて、リビングにいた母さんに声をかけた。
「美羽を、家まで送ってくる!」
母さんが何か言っていた気はするけど、とりあえず無視した。
玄関の扉を、勢いよく開いた。
「ヒロくん、ごめんね!」
家の前にいた美羽に近付くと、美羽はニッコリ笑って頭を下げた。
「女の子一人で、こんな時間にウロウロするなよ!」
つい、キツい言い方になってしまった。先に電話してくれたら、俺が美羽ん家に行ったのに……
「自転車だったら、すぐだよ!ヒロくんは、心配性なんだから。ハゲるよ?」
美羽だから、心配するんだろ!心の中で叫んで、ジロリと美羽を睨んだ。
美羽は軽く肩を竦めた後、後ろに止めていた自転車の前籠から茶色の紙袋を取り出した。
「ヒロくん、いつもお世話になっております。これからも、よろしくお願いします!」
「おお!」
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