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相川(あいかわ)早希(さき)。 僕のクラスの図書委員。 身長は160代。黒縁メガネにボブカット。 休憩時間はいつも本を読んでいる、いかにも図書委員、というテンプレの塊のような人だと僕は思っている。 外見だけ見れば大人しそうな子だと思うのだけど、実際は違うらしい。 「大丈夫かい、図書委員さん」 ホームルームを終えて、最後に保健室に寄った。 「ん……? あなた、何?」 寝起きで伸びをしながら、彼女は僕を睨みつけてくる。 その眼光に思わず萎縮してしまった。 「あ、うん。その、先生に頼まれてさ……」 配布されたプリント類を渡す。 「そう」 興味ないと言わんばかりに自分のカバンの中に乱雑に押し込んでから本を取り出し、読み始める。 「あなた、おかしいと思わないの?」 「な、何が?」 僕の反応に納得が行かなかったのか、僅かに溜め息を吐いてから続けた。ページをめくる手は止まらない。 「呆れた。その分だと、自分自身が周りからどういう評価受けてるか知らないんでしょ」 クラスでも目立たない、居ても居なくてもいいような人間。 「そう、それ。なんだ、よく分かってるじゃない」 僕の心を見透かしたように言う。視線は相変わらず本に向けられたままだ。 「え?」 「だから、お荷物である私のお守りっていう厄介ごとをあなたに押し付けただけでしょ、それ」 それは、そうなんだろう。 彼女から見れば。 だって、この場に来たのは、他でもない僕の意思だったから。 高校入学当時からの噂。 この学校には、魔女がいるのだとか。
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