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聖女の勇者
「神よ…どうか、我らに力を…」
籠城を始めてから17日目。この小さな街は限界だった。
ここ数年で異常繁殖した魔猿の群れが山から人里に降りて来ることは決して珍しくはなかったが、そのたびに街を守る騎士団が総力を挙げて山へと追い返していた。
そう、追い返していた。
そして追い返された魔猿は山でさらに淘汰と繁殖を繰り返し、とうとう人の手に負えないほどの大群となって押し寄せたのだ。
堅牢な城壁に囲まれた街ではあったが、弱いとはいえ魔獣と呼ばれるに相応しい戦闘力、圧倒的な数による包囲、そしてたかが獣と断じるには高い知能が守る人間たちを苦しめていた。
外からの補給が無ければいつまでも立てこもることは出来ないし、交易のためにこの街へ向かってきている商隊に被害が出ているだろうことも想像に難くない。誰かが通報して国軍が動いてくれれば救援の可能性もあるだろうが、逆にこんな僻地は見捨てられる可能性も充分にあり、正直期待は出来なかった。
殺しても殺しても数の減らない魔猿の群れを見下ろしながら、城壁の上で誰もが神への懇願を呟いた。救いを求めた。あるいは死後の安寧を望んだ。ただひとりを除いて。
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