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寝越智夢見睡眠事件帳
作品名:寝越智夢見睡眠事件帳(よみきり短編)
書いた人:甘らかん(かんらかん ニャーといってニャーと返す猫が好き)
丑三つ時とは、現代でいうなら深夜2時から2時30分の間だそうだ。草木も眠るとはよく言ったもので電気もガスもないお江戸の町、外をうろつくのは幽霊くらいのものだろう。
「なんでこんな時間になっちまったんだよう」
「知るかよ、おまえが賭場で勝ったり負けたり浮き沈みが激しすぎたからだろ。それで勝ててればまだしも。提灯も持てねぇとはよ」
「なんだよ、いいところできりあげようとしたところを、もっとやれもっとやれとけしかけたのはおまえだろ」
ふたりの男は右心房と左心房にでもなったかのようにひっついている。帰り道が同じ方向なのだろう。
街灯などあるわけもなく月明かりだけが頼り。草木も眠っているから聞こえてくるのは虫か蛙の声。
「ゲコゲコが聞こえるから川沿いだ。まっすぐ行けばじき長屋に着くさ」
「そう願いたいね」
ふたりはひとつになって心の臓をドックンドックンいわせていた。
「ひいいいいいいいいいい!」
悲鳴をあげたのは右心房。つられて左心房も腰を抜かす。
「なんだよ! いきなり!」
「あそこ、あそこ」
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