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鳥の行く手に灰色の山がありました。
四角い瓦礫がたくさん重なっています。瓦礫にはやはり四角い穴がたくさん空いていました。
鳥はその山の上を飛びました。
すると崩れた山はぐんぐんと伸び上がり、ピカピカとしたガラスをはめた建物になりました。建物の中にはたくさんの人間がいて働いています。
建物の下の黒いアスファルトの上にはたくさんの車が走っていました。
鳥は山をそれました。するビルの街の姿は溶けるように消えてしまいました。
今のは瓦礫の山が思い出した昔の記憶です。
鳥の行く手に少し色の違う灰色の大地が見えてきました。大きく広い大地です。ひどくでこぼこしていました。
鳥はその大地の上を飛びました。
するとその大地の向こうから青い青い波が寄せてきました。
波の中には大きな魚、小さな魚、からみあう藻や貝やエビや蟹やくらげや、そのほかのたくさんの生き物の姿が見えました。
波は大地にぶつかり、白いしぶきをあげました。
しぶきの中にもたくさんの生き物たちがいました。人の顔もたくさん見えました。
そして最後に大きな鯨の群が波の向こうからやってきました。
くじらは甲高い声で海の歌を鳥に歌いました。
鳥は海を越えました。すると海はたちまち空の中に消えてしまいました。
今のは海が思い出した昔の記憶です。
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