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鳥は海の向こうの小さな丘へ向かいました。
その丘はなぜか白く白く輝いていました。雪でしょうか?
いいえ、違います。
それは鳥の白い羽根。無数の羽毛でした。
鳥はその白い丘の上に降り立ちました。そしてくちばしの中から小さな種を吐き出しました。
種が地面に落ちると、鳥はその上に自分の羽根を広げて空気の寒さから守りました。
鳥のすぐそばに少し前に飛び立った仲間が同じように倒れていました。
仲間の体の下には小さな緑の芽がありました。以前、仲間が運んできた種です。
鳥の体で暖められ、芽を出したのです。
その向こうにも、またこちらにも、たくさんの鳥が、仲間たちが倒れていました。 ちらばった羽根は仲間たちのものでした。たくさんの鳥の体がその丘を白く埋めているのでした。
ほかの仲間たちの体の下にもたくさんの芽がありました。
もう少し離れた丘には鳥の体を栄養にしてもっと大きくなった芽もあります。
もっと離れた丘にはずいぶん成長して葉を広げた木々もありました。
灰色の地面の終点には大きな緑の森があったのです。
鳥ははるか向こうにけぶる緑の森を見ました。
その緑の森の上に楽しくさえずりながら飛び回る鳥を、四つ足の動物を、そして笑う二本足の人間を見ました。
それは過去の記憶ではありません。
これから訪れる未来の希望だと鳥は知っていました。
これからもたくさんの鳥がこの丘を目指し種を運びます。一度滅んだ星にもう一度命を運ぶために。
滅んでしまった人間たちが、最後に作った鳥たちの、それが夢なのでした。
鳥は未来の夢を見るために、その輝く金属の瞳をそっと閉じました。
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