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ジャスパーはベッドに乗せ換え、麻酔から目を覚ましていない彼女を診察室に誘導する。
今度は前世に戻す場所について考えなければならない。
友梨奈の家にきた親戚ということにするが、この少女も何かの病気に罹っており、手術していたところだった。
よって、麻酔から目が覚めた時には病室の方が自然だろう。
彼女は自ら命を絶っているため、その当時の自分の姿を客観的に見ることが可能かもしれない――。
「もし、前世に戻すならば……やはり、病院だな……」
彼にとって最も自然なシチュエーションは病院のとある病室しか見当たらない。
最初は「自殺を謀った場所で親御さんが見つけた」というシチュエーションも考えたが、あまりにも残酷すぎだとジャスパーは判断した。
。
「では、あなたをここから前世に戻させていただきます。これからは木野家の親戚として、有意義な時間が過ごせることを祈ります」
ここからは彼は再びタブレット端末にて監視という名の見守りに入ることとなるが、転生した彼女の性格をまだ告げていないことに気がついてしまった。
彼女の性格は「悪役令嬢」であるということを告げずに現世に戻してしまったことに――。
「そういえば、別の名前も告げるのも忘れていた……」
ジャスパーは回転椅子の背もたれに身を委ね、後悔していた。
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