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【Town where whistles live】
その日、遥か南東の海(わだつみ)から吹いた緩やかな風は、街の気配を変えてみせたとともに、新しい季節の色付けも添えた。
風薫る。
そっと静かに流れ去って。
*
インチキ臭い方言を話す葉巻をくわえたオジサンが、頻繁にこの公園に出没する。
その噂は篠田琴美(しのだことみ)も前々から承知はしていたので、実際、当のオジサンが目の前に現れても、別段動じる気配は彼女にはなかった。
腐ったバナナのような臭気を全身から放ち、どうしてか身なりばかりは薄汚れてはいるがスーツを着込んでいる、眼前の浮浪者風の中年男性。つまり、その出で立ちには不釣合な懐具合のよさそうな葉巻をくわえた、土褐色の肌をしたオジサンをうつらうつらと見ているだけの、少女がそこにいるだけ。
さらに公園のベンチに座っている琴美は、すぐ側でゴミ箱から古雑誌や空き缶を漁っている、およそホームレス然としたオジサンの行為を怯む事なくむしろ凝視する。
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