8話 巌流島の決闘

2/2
前へ
/18ページ
次へ
そして。 武蔵はやったの思いで、巌流島に到着した。 「遅いぞ武蔵!いつまで待たせるつもりだ!」腹も減ってるのにと、腰に手を当て、小次郎は大声で叫んだ。 武蔵は手をかざしながら「いや、悪かった。なんせ船酔いがひどくて、うぷっ、もうなんか、ふらふらで」と言い訳している。 「武蔵!いざ勝負だ!あれ?剣はどうした?」小次郎は、武蔵が手ぶらである事に気がついた。 「いや、実は、途中で木刀を二本、海に流されてしまって」武蔵は右手を頭の後ろに当てて、軽くてへっと笑った。 「何がてへっだ!勝負にならないではないか!」小次郎は呆れ返って、その場にしゃがみ込んでしまった。 すると突然「小次郎敗れたり!」武蔵は不意をついて、小次郎の胸ぐらを掴み押し倒そうとした。 卑怯な男である。 「な、何をするのよ!」小次郎の声が変わった。 「えっ?」武蔵は小次郎の胸元から見える膨らみを見て「え、ええー?」と尻餅をついた。 「おぬし、女だったのか?道理で美男子だとは思っておったが…」 小次郎は、赤を赤らめて「女で何が悪い。天下無双に男も女も関係ないわ」と胸元を直した。 「しかし、女は切れぬ。卑怯な真似はしたくない」 と、さっきまで卑怯な手を使っていた男の言葉とは思えない。 「今日はもう遅い。どこかで宿を取って、続きは酒を呑み交わしながらどうだ?」と武蔵は小次郎にすり寄って行った。 「ちょっと!どさくさに何触ってんのよ!」と小次郎は武蔵の手の甲を、ぴしゃりと叩いた。 「いいじゃん。せっかくなんだし」 もう、ただのおっさんである。 すると武蔵の背中から「旦那、ちょっと旦那」と船頭が声をかけて来た。 「何だよ、いいところなのに」武蔵はぶつぶつ言っている。 「いやあね。いちゃつくのはいいんですが、もうすぐ満潮なんでね。早くしねえと戻れなくなりますぜ」と船頭はにやにや笑ってる。 「ええ?本当に?何だよもうー!」武蔵は駄々をこねていた。 後々、巌流島の決闘は、こうして語り継がれて行ったのだった。 事実かどうかは別にして。 終わり
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加