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そんなある日、一人のお客が店を訪ねて来た。
年齢は五十歳位だろうか?品の良いおばさんだった。
「実はあなたに、知って欲しい事があるの」そう言ってカグヤの向かいに座った。
「あなたは人間ではないの。いや、厳密には人間ではあるけど、地球人ではないのよ」
カグヤは「はあ?」と口を開けた。
「あなたは月側の人間なの。人は昔、月と地球二つの星で誕生したの。地球は大地に恵まれて、人はどんどん繁栄したわ。しかし月は面積も小さく、人は生き抜くために力をつけたわ。それが、あなたの持つヒーリングの力よ」
「まさか、そんな事って…」カグヤは首を横に振った。
すると女性は、懐からある物を取り出した。
「これを見て。あなたにも見覚えがあるでしょ?」
それは涙の雫のような形をした、青く輝く水晶のような球だった。
カグヤは、はっとしてネックレスを胸元から引き出して、手のひらに乗せた。そこには、同じ青い水晶のような球があった。
おじいちゃんが私を見つけた時、一緒に竹の中に入っていたと言っていた。
「あなたに、月に戻って来て欲しいの。今、月と地球の均衡が崩れて来ているの。いずれ近いうちに、月と地球は衝突してしまうでしょう。でも、それを避けるためには、どうしても若いあなたの力が必要なの!もう月には、若い力が残っていないのよ」
その女性は必死に訴えていた。
「そんな、無理よそんなの!私に何が出来るって言うの?そんなの無理だって…」カグヤの言葉はやがて途切れて、黙り込んでしまった。
「明日の満月に迎えに来るわ。今回を逃したら次の満月には間に合わないかもしれない。
お願い。それと、その雫はあなたのパワーの源。大切にしてね」そう告げて、女性は帰って言った。
その晩、カグヤは無口だった。
「どうしたカグヤ。体が悪いのかい?」おじいさんは、心配そうに言った。
「うるさいわね!なんでもないわよ」カグヤは自分の部屋に閉じこもった。
二人と別れたくない!その思いを口に出来ない自分が、本当に情けなかった。
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