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タツオは顔を真っ赤にしていた。
「あなた、何をしてるの?早く」クミコが催促してくる。「分かってるよ!分かってるんだけど…」と、タツオはクミコの肩に捕まった。
すると…しびれが消えた。何だ?
タツオは何も無かったかのように、立ち上がり挨拶を始めた。
しびれは、タツオからクミコに移っていた。どうやら触った人に移るようだ。
またー?何で?いたたたっ!クミコは顔をしかめた。まずいわ!さっきより、しびれが強烈だわ。
タツオの挨拶が終わると、会葬者を送り出さなくてはいけない。自分だけ座っていたら、何て酷い嫁なんだとレッテルを貼られるわ。ううっ。あなた、話をもっと引き伸ばして頂戴。何ならおじいちゃんの生い立ちから話して…などとあり得ない事を祈っている。
「お母さん、どうしたの?」息子のタカシが心配そうに訊いてきた。
クミコは涙目になりながら思った。
ごめんねタカシ。子供だからと言ったけど、このしびれは大人でもキツイわあ。
そしてそっと、タカシの頭を撫でた。
あれ?治った?
隣を見ると、タカシがひっくり返っていた。
終わり
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