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4話 アンジェラとピーター
アンジェラはまだ1十歳の女の子。でも、両親からの厳しい言いつけや、強制される労働に嫌気がさしていた。
アンジェラは養女である。身寄りがないまま、子供のいないこの夫婦に引き取られた。
アンジェラは、ベッドでしくしくと泣いていた。
すると「元気出して」と男の子の声がした。
顔を上げながら「あなたは誰?」アンジェラが訊いた。「僕はピーター。ネバーランドから来たんだ」
ピーターは腰に手を当て、右手で鼻の下をこすりながら言った。
「ネバーランド?」アンジェラは訊き返した。
「年も取らない、とっても素敵なところさ。君も来るかい?」ピーターはそう言って、手を差し伸べた。
「うん!」アンジェラは、今の暮らしから抜け出したかったのだ。
ピーターはアンジェラの手を取り、窓を開けた。
すると、二人の体はふわっと宙に浮き、そのまま夜空を駆け巡った。
「うわあー」アンジェラは、見たこともない美しい景色に驚いた。町並みが、まるで光輝くミニチュアのおもちゃのようだった。
ネバーランドの暮らしは、それはもう素晴らしかった。アンジェラは時間を忘れて夢中になり、いくつもの夜を迎えた。
そしてある晩、ピーターは言った。
「アンジェラ、そろそろ帰る時が来たよ。いつまでもという訳にはいかないんだ」
アンジェラは、残念そうに頷いた。
「これを」とピーターは、小さな箱をアンジェラに渡した。
「なあに、これ?」箱を開けようとするアンジェラを、ピーターは止めた。
「これは日本に行った時、お土産に貰ったんだ。凄い高価な物らしい。玉手箱って言うんだ」
「へえ。たまてばこ」
「帰ってから、両親と一緒に開けるといいよ。きっと喜ぶよ」ピーターの計らいに、アンジェラはたいそう喜んだ。
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