17人が本棚に入れています
本棚に追加
「大丈夫だよ。この間は時田くんが泣いてたからつられただけ」
時田くんのせいだよと言うと、時田くんはぱっと頬を赤くした。しまったって思ったけれど遅い。
「ちがうの! 時田くんがそこまでその人のこと好きだったんだなって思ったし、なんかちょっと……うらやましくもあった、かも」
「槇は好きなやついないの?」
「え……」
突然の切り返しにわたしはフリーズしてしまった。
時田くんだよ、とは冗談でも言えない。言えるはずがない。
「って、俺に言えるわけないか。ごめん」
「う、ううん」
言えない理由は恥ずかしがっているせいだと思われたみたいだ。わたしはその勘違いにほっとする。
「ほんと、いい? 話しても」
「うん。アイスもごちそうになったし」
「サンキュ」
時田くんがはにかんで笑う。頬に線ができて凛々しい顔立ちが幼くなる。その笑顔が一番好きだ。
ストロベリーチーズケーキを数回スプーンで突いた時田くんは、ぼそりとつぶやく。
「初恋だったんだ」
「へ、へえ……」
最初のコメントを投稿しよう!