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「バスケ部入ってまだ二か月とかそういう頃、練習中に足ひねって……けど、一年の実力チェックみたいな試合形式の練習中で、絶対いいとこ見せたいって思ったから抜けたくなかった。顔に出さなきゃばれないと思ったんだ。そしたら『捻挫を甘く見ないで! すぐ言うこと!』って怒られてさ……マネージャーに俺の気持ちわかんないでしょって反発したんだ、俺」
うん、うん、ってうなずいて聞くけど、時田くんのひと言ひと言が小さな針になってわたしの胸につき刺さる。アイスをすくうふりでうつむかないと強ばる顔を見られてしまいそうだ。
「そしたら『チャンスなんて何度でも巡ってくるんだよ。けど、身体は一度壊れたら絶対同じにはなんないんだから』って。実体験だよって言われたら何も言えなくなってさ……それから親身に怪我の具合心配されてるうちに……なんだけど」
バスケ部にはマネージャーが何人かいる。だけどその話を聞いてわたしの頭に浮かんできたのはアオイさんの顔だった。
「単純すぎって思った?」
「思わないよ、そんな……優しくされたら誰でも特別に思うようになるよ」
「だよな! 女の人にがっつり怒られるのとか初めてだったし、けど怪我の心配してくれるの優しいし……でも、そういうんじゃないんだって」
「え……?」
そういうんじゃない、の意味がわからなくて聞き返すと、時田くんは眉を下げて苦笑いする。
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