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「おはよ」
「あ、おはよう」
翌朝。珍しく靴箱で時田くんと一緒になる。隣の列に靴をしまう時田くんを見て、突然感傷的な気持ちになった。
来年はきっとクラスがわかれるだろう。二年間一緒だったってだけですごく奇跡的なことなのだ。
「ちょっと……いい?」
HRが始まるまでまだ時間があるのを確認して時田くんを中廊下に誘い出す。こちらから行けば遠回りだけど、教室にはたどり着ける。
「昨日、試合おつかれさま」
「わざわざ応援来てくれてたのに気づかなくてごめん」
「……うん」
事前にも何も言わなかったし、昨日もなにも言わなかった。だけどおめでとうってメッセージを送ったタイミングで時田くんは気づいたらしい。
「アオイさんも来てたよ」
「あ──うん。見えた」
息が白くなる気温のなか、時田くんの頬に赤みが差す。二メートルも離れていなかったのに、アオイさんに気づいて、わたしに気づかなかったことを薄情だとは思わなかった。
──好きってそういうもの、だよね。
「ってか、え? あれ? 俺、言ったっけ……」
わたしのかまかけにしっかり引っかかった時田くんは、焦りをあらわにしている。言葉で聞いたことはない。だけど、態度では十分伝わってきていた。
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