17人が本棚に入れています
本棚に追加
「わたし、時田くんが好きなの」
「え──……え? ええっ?」
思わず大きくなった時田くんの声が中庭に響く。行き交う人は少ないけれど、遠くで振り返っている男の子が見えた。
ようやくわたしの口からあふれ出した告白に、時田くんは眉を下げた困り顔をしている。
だから「ごめん」。そう聞こえてくる前にわたしは走り出した。中廊下に上履きのぱたぱたという音が響いていく。
まっすぐの廊下を走りながらわたしは清々しい気持ちでいっぱいだった。
──ようやく失恋できた。
これっぽっちもわたしの好意に気づきもしない時田くんにバイバイする。
だけどこれで終わりじゃない。
わたしは失恋から始める。
これから時田くんは、わたしの態度からも言葉からも“好き”の信号を受け取り続けることになるはずだ。
失恋してから三か月以上も痛みに耐え続けた上の決断を、思い知ればいい。
時田くんが誰を好きでも、わたしは時田くんが好き。
揺るがない気持ちを確信したからわたしは走り出す。
失恋の先にも恋はある。
そう信じて。
最初のコメントを投稿しよう!