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「つまり、私は真心を持ってあの人といたの。あなたはどうか知らないけど。私は誠心誠意、あの人を愛したわ」
愛子が言い終わるか終わらないかの絶妙なタイミングで、水をかけられた。
「あんたねぇ!あの人にあんたみたいな愛人がいると知った時にどんな思いでいたと思ってるの!?この泥棒猫!これ持ってさっさと消えろ!」
刃物があったら刺してるんじゃないかという程、ものすごい剣幕で怒鳴り散らし、茶封筒を叩きつけた。
(あの人はこんなに愛されてるのに、何が不満だったのかしら?)
愛子は自分と愛人契約を結んだ男を軽蔑した。
「さっきも言いましたけどお金はいりません、お望み通りあの人とは別れます。今後一切お会いしません、それではさようなら」
愛子はきっぱり言い切ると、呆然としている里美を置いて喫茶店を出た。
喫茶店を出て少し歩いて曲がり角を曲がると、人気の少ない道に出る。愛子は電柱に寄りかかり、スマホをポケットから出した。
愛人契約リストから里美の旦那を見つけると『奥さんにバレたから別れます。あんなに愛されてるんだから今後愛人を作るのはおやめになったら?』とメールを送ると、彼の連絡先はブロックして消した。
「はぁ……。にしても我ながら笑えるわ」
愛子は先程里美に言った言葉を思い出して自嘲する。
「なぁにが誠心誠意愛してたよ。人の事愛せないくせに……。なんて虚しい嘘ついてんのよ」
愛子はさっき愛や恋と書いたページを破り捨てると、他の愛人と会う為にメールを打ち始めた。
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