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雨で視界は霞んで見え、信号の赤い灯がアスファルトに揺らいている。
佳子は目を凝らした。
なにあれ? 信号の灯よね。
雨で反射した赤い灯は光の反射ではなく、血のようにどろっとした感触に思えた。
佳子は身体の調子が悪いせいで、感覚的におかしいのだろうと自分に言い聞かせる。
脳内時間がゆっくりと動き出す。赤い水影が揺らめきながらこちらに向かってくる。背筋にぞわぞわと悪寒が走る。その物体から目を離すかとが出来ない??。
佳子は身体を硬直し、祈るような気持ちで目を塞いだ。
「今のなに?」金縛りが解かれ、佳子は周りを見回した。道行く人は普段と変わりなく、雨のアスファルトをてくてくと歩いてゆく。
揺らめく赤い水影。佳子は気のせいだと思いながらも、一瞬、赤く揺れる水影が誰かに助けを求めるかのように手を伸ばしたように見えた。背筋に寒気を感じ彼女は大きく身震いをした。
ピッー、ピッーィー。背後から車のクラクションに促され、佳子は現実に引き戻され慌てて車を発進させた。
彼女は髪をかきむしった。髪の毛が指の間を縫って踊る。
今朝から何かがおかしい。いや、意識するからそう感じるだけなのかもしれないが、この感覚はなんなのだろう。
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