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藤川紫織21歳、肌は白く細身で背が高い。カシミヤの白いロングコートに黒い革製のブーツという出で立ちだ。ウエストがくびれたデザインのコートは末広がりのAライン。彼女は雑誌のモデルさながらに、そつなく着こなしていた。
紫織は山野栄を見つけると、長いストレートヘアをさらさらと揺らしながら、嬉しそうに手を振って改札口を通り抜けた。
「先生! わざわざ迎えに来て下さってすみません」
「いやあ、久しぶり。東京からの長旅でおつかれでしょう。旅館まで送りますね」
と言うと、旅行カバンをさっと持ってあげ、駅の駐車場の方向を指さした。
彼女は紙袋を差し出して
「あの……これ、お土産。先生の好きそうな紅茶です。あと、お借りしていた本も一緒に入っています」と言った。
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