さよならのあとに

３

　
「……で、恋人のふりって、具体的に何をしたらいいんでしょう？」
「うーん、そうだねぇ……」
「とりあえず、恋人がいますってアピールをしたいわけだから、一緒にいればいいってことですよね」

二人して神妙な面持ちで向かい合う。

「だけど、恋人が毎日お店に来てたら、彼氏としてもお客としても、ウザくないですか？でも、あの女の人がいつ来るか分からないし……。いっそ、事務所でスタンバイして……」
「ものは相談なんだけど」

一人ぶつぶつと計画を練っていると、宇佐美さんがそれを遮るように切り出した。

「りりちゃんって、副業はオーケー？」
「……お恥ずかしながら、ただのパートなので。何も問題は」
「じゃあ、お店を手伝ってもらえたりしないかな？アルバイトとして」
「……アル、バイト？」

“彼女”が一転、“アルバイト”。
まさかの申し出に目を丸くして彼を見返す。

……もしかして”彼女のふり”も、断るに断れなかった？
そんな不安を抱きながら。

「実は最近、バイトの女の子が辞めちゃって。なんとか一樹と２人で回してるんだけど、やっぱり週末は厳しくて」
「もしかして、今朝のブラウス……」
「はは。うん、そうなんだ」
「さらに、もしかして……」

敢えて続きは伏せて、ただ彼をじっと見つめれば、彼は逃げるように目をそらして、ただ静かに笑う。