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こうして、彼の笑顔とまかない付きにうまく乗せられて、彼女役兼アルバイトを始めることになった。 これがまた、週末は本当に忙しい。 小さいお店とはいえ、入れ替わり立ち替わりやってくるお客さんにてんてこまいだ。 むしろ、アルバイトとして雇い入れることこそが彼の本当の目的だったのでは、と今では思う。 だって、彼のあの笑顔が作り物だと知っている私は、彼のそれに勘違い(しそうになるけれど)することはない。 ましてや失恋したばかりで、元彼のことをまだまだ引き摺っている。 彼を好きになる可能性がほぼゼロに近い私は、彼には好都合のはずだ。 私だって、彼を失った悲しみを埋めるためにここにいるのだから、お互い様なのだけれど。 「つっ……かれたー!」 「お疲れ様。ごめんね、仕事で疲れてるのに」 事務所のソファに倒れ込んだ私に、背後から現れた宇佐美さんが苦笑を浮かべて言う。 「はい、今日のまかない」 慌ててきちんと座り直す私に、宇佐美さんがお皿を差し出す。 覗き込めば、見るからにふんわりとろとろのオムライス。 思わずごくりと喉が鳴る。 「いただきます」 「はい、どうぞ」 彼の答えと同時に、その目もはばからず大きな一口を放り込めば、彼は肩を震わせて笑う。
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