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  『なんなら友達連れて、お客さんとしておいで』 宇佐美さんの優しい提案を思い出して、携帯を開いたのは朝のこと。 それからかれこれ数時間。 すっかり意気消沈した私は、ベッドの上で枕を抱えながらぐだぐだと過ごしている。 というのも、休日に一緒に食事に行くような親しい人がいないことに気が付いたからだ。 仕事が終われば一目散に家に帰っていた私に、職場の人との付き合いなんてものはほぼないに等しい。 学生時代の友人も、タクマと付き合うようになってから疎遠になってしまっていた。 私の生活のほとんどが、いかにタクマで占められていたかが明らかになったと同時に、それを失った今、自分がからっぽ同然であることを思い知る。 部屋をじっくり見回してみれば、本来好みじゃないもので埋め尽くされている。 全部、タクマの趣味のものばかり。 自分を押し殺して、盲目的に彼を愛することで、彼の愛するものを愛することで、私は満たされていると勘違いしていた。 幸せだと、言い聞かせていた。 本来の私って、何が好きだったっけ? 服も、家具も、メイクも…… どこにも本当の"私"はいない。 「ダメだ。出掛けよう」 このままじゃ、どんどん鬱々とするだけだ。 別に、取り返しがつかない訳じゃない。 そう自分を奮い立たせ、鞄を手に取った。
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