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出掛けようと張り切って家を出たものの、特に行く宛も、目的もない私の足が向いたのは宇佐美さんのお店。 もしかしたら、仕込みの準備でもうお店にいるかもしれない、なんて淡い期待を抱いていたけれど、ドアには鍵が掛かっていて、人の気配も一切感じられない。 「そりゃそっか。まだお昼時だもんね」 さて、いよいよ本当に、なんの宛もなくなってしまった。 そう、小さく溜め息を漏らしてうなだれる私に、空腹感は否応なしに訪れる。 「よし、どこか1人でも入りやすそうなカフェを探そう」 そう心に決めると、なんだかワクワクしてくる。 歩き慣れない休日の昼間の街中。 今までとは違う風景が眩しいくらい視界に飛び込んできて、またしても、これまでの世界がいかに狭かったかを知る。 これまでの時間を損した気分と、心が踊るこの感じを久々に味わうお得感が複雑に入り交じる。 あぁ、なんだ。 私って、結構強い。 思わずふふっ、と笑みを漏らす。
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