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「宇佐美さんは、何がきっかけで料理を始めたんですか?」 特に深い意味のない、無邪気な質問のつもりだった。 けれど一瞬、彼の表情が曇って、困ったような笑顔になったのを、私は見逃さなかった。 「あー……あっ!小さい頃から、お手伝いしてたとか?私も、両親が共働きだったんですけど、料理の担当はお兄ちゃんだったから、料理はからっきしで……」 慌てて話をそらそうとして、つい饒舌になる。 これじゃ、あまりにも不自然で、気付きましたよと言っているようなものだ。 「ごめん、気を遣わせちゃったね」 「え?やだなー、何がですか?」 必死にとぼけて見せるけれど、それももう見透かされていて、宇佐美さんはただただ申し訳なさそうに微笑む。 「……何かに、没頭していないと……立っていられない時期があったんだ」 「あ、あの……無理して話さなくて、いいんですよ?」 そうして彼の紡ぎ始めた言葉に、戸惑ってしまう。 慌ててそれを遮ったけれど、彼は優しく目を細めて続ける。
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