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「林さんさ。最近……何か変わったこと、あったりした?」 「えっ」 同僚の藤村さんからの唐突な質問に、一瞬思考が停止する。 「え……と、それはあの、一体、どういう……?何か憑いてる系、ですか?」 肩をすくめて恐る恐る尋ねる私を、彼女は長い睫毛をぱたぱたと揺らしてから、笑い飛ばす。 「なにそれ、そんな能力ないわ!そうじゃなくて、うーん、なんていうか……雰囲気?ほら、前は定時前になるといっつもソワソワして、真っ先に帰ってたし。服装やメイクなんかも……ちょっと変わった気がして」 「だから何かあったのかな、って」と彼女は付け加えた。 確かに、前みたいに急いで帰らなきゃ、なんて時間を気にすることも、今はない。 服装やメイクまで気に掛けていなかったけれど、『タクマが好きなもの』をあえて選ぶこともしなくなった。 その鋭い洞察力に感心してしまう。 それとも、私が分かりやすすぎるのか。 それにしても、いかに私の世界がタクマを中心に回っていたのか、こんな形でまたしても知ることになるなんて。 もう十分、思い知ったつもりだったのに。
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