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「あれ、違う?ちょっと前まで沈んでたけど、ここ1週間くらい?なんか楽しそうだったからさ」 「えっ、あの……なんか、すごい……見られてる?」 私以上に私自身に詳しい彼女に、疑問符はさらに増えて、そんな言葉をつい漏らさずにはいられなかった。 「あはは、そう!すっごい見てた。ずっと話してみたかったんだよね、林さんと!でも、なかなかチャンスがなくってさ」 無邪気に笑う彼女はとても可愛らしくて。 周りが何も見えていなかったこれまでの自分を悔やんでしまう。 「ねぇ、今日はこのあと予定ある?良かったらご飯でもどう?」 「あ……ごめんなさい。実は私、バイトの掛け持ちしてて」 「今から?タフだなぁ!それじゃ、明日のランチはどう?」 「是非!」 「やった!」と嬉しそうに白い歯を見せる彼女に、胸がギュッと苦しくなる。 もう自分には何もない、なんて絶望すら覚えたけれど、そんなことは全くなくて。 こうして気にかけてくれる人がいる。 今から出会える人や物事があるんだってことが嬉しくて。  
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