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「実は明日、職場の人とランチに行く約束を」
「だから嬉しそうなんだ」
「はい。実はそういうの、私、初めてで」
照れ臭くて隠したいのに、緩む口元をどうしても引き締められない。
「あ、でも‥‥‥なに喋ればいいんだろ。つまんないやつって、思われちゃったらどうしよう!」
急に不安が湧き上がるように生まれて、途端に焦り始める。
だって、これと言って取り柄もなければ、趣味もない。
結局独りよがりで終わった恋の話なんてもってのほかだし。
ユーモアのセンスだってない。
最近の流行りの歌も、芸能人も何も知らない。
「やっぱりやめておいた方が‥‥‥」
「こらこらこら」
ひとりネガティブな思考に陥る私を引き止めるように、宇佐美さんは私の腕を引いた。
ハッとして見上げると、彼は呆れ顔で私を見下ろす。
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