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「りりちゃん?」 呼びかけにはっとして、抱えていた頭を勢いよく上げる。 「どうかした?大丈夫?」 心配そうに顔を覗き込む宇佐美さんの視線から避けるように、彼の向こうに見える時計に目をやれば、ぎょっとして慌てて立ち上がる。 「ごめんなさい!休憩時間過ぎてる!!」 「それはいいんだけど、体調悪い?」 「いえ、ほんとごめんなさい!考え事してました」 うまく宇佐美さんの目を見ることができずに、済んだ食事の皿を持ち上げ、よそよそしく彼の横を通り過ぎようとすると、彼の手が肩に伸びて、それを引き留めた。 「慌てなくていいから。落ち着いて」 休憩時間が過ぎていたことに慌てていると思ったのか、宇佐美さんは穏やかな声で私を宥める。 「今はそんなに混んでないし、ちょっとくらい大丈夫だから。それにほら、まだデザート食べ終わってないでしょ」 「あ……」 手付かずのままだったデザートをぼんやりと写していると、宇佐美さんは私の肩を掴んで、もう一度ソファに戻るよう促した。
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