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やだやだやだ。
こういう場面に遭遇したくなかった。
うしろからその子と悠君が話してる声がするけど、とにかく逃げた。
耳を塞いで無視だ無視。
汗がこめかみを滑る。
やだなぁもう、メイクが台無しだ。
「沙羅おはよっ。何急いでんの?」
顔を上げたら親友の京ちゃんが、キレイな黒髪を揺らして笑ってた。汗なんかかいていない涼しげな顔で。
「京ちゃん、なんかもう……朝から疲れちゃって」
彼女の顔を見たらホッとして気が抜けた。
「メイクよれるの早くない? パウダーで押さえなよー」
「ちゃんと押さえたもん!」
「てかさ、珍しく佐野君いないけど、この涙目と尋常じゃない汗はそのことと関係してんの?」
「……話聞いてくれる? 涼しい教室で」
「涼しい教室で?」
「そう、そこ大事」
だって冷や汗だか脂汗だかが普通じゃない。
そらくらい動揺しちゃってた。
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