激甘アプローチと塩対応

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グズグズももやもやも解消されないまま、練習メニューだけを淡々とこなした。 8月の頃よりは日がだいぶ短くなった気がする。 夏練のときは、7時でも明るかったのに、西の空はもうグレーに煙ってた。 でも解散したあとも、私は居残って少しだけ練習をすることにした。 「京ちゃん、先帰っててー。ちょっと先生に呼ばれてて。帰りはたぶん送ってもらえるはずなんだ」 「えー、そうなの? キャプテンやっぱ大変じゃん」 ほんと言うと、それは大嘘。 あれからもサービスミスが続いて、実はかなり焦っていた。サーブが入らなきゃ、ゲームは始まらないんだもん。 その連続で失点が重なって、なんの力も発揮できずに、つらい練習が無意味になる試合だけはごめんだ。 相方の京ちゃんの活躍まで奪うことになるし、どうにか勘を取り戻さないと。 みんなには知られたくなかったけど、ほんとはすごく不安だった。 悠君への気持ちを自分でうまく扱えないことと、ボールひとつ相手コートに入れられないことは、どこかでリンクしているようにも思えた。
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