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「それ以前にさ、女の子の部屋に勝手に上がり込むってどうなの?」
「今日はストレートがいいなー」
「人の話を聞きなさいよ」
「ヘアジェルやめて? あれ苦手」
「ねぇ、話聞いてな……」
油断してたら後ろからぎゅうぅ。
「沙羅ちゃんつかまえたっ」
鏡のなかで悠君と目が合う。
「いい匂い」
イタズラな目で私に微笑んで、
さらにくっついてくる。
悠君は小さい頃からこうだった。
スキンシップが過ぎるんだ。
感情が行動と直結してる。
大きくなった今でもそれは変わらなくて、内心私がうろたえてることなんかお構いなしで、いまだにこんなふうにからかってくる。
遊ばれてるみたいでちょっとムカッとするんだけど……実は一度も振りほどけたことがない。
そんな自分が嫌になる。
それなのに、頭のなかが真っ白になって、心拍数があがりすぎてそれどころじゃなくなってしまう。
「あのさ。もうそういうの、やめよ?」
でも今日はそう言えた。
おバカな悠君に、そういうことは好きな人にしかやっちゃダメなんだよって、いい加減教えてあげないと。
「なんで? 俺、沙羅の髪の匂い好きなんだもん」
なのに悠君は、私の髪に平気で顔を埋めるんだ。
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