黒髪王子と夜の街

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「掴み所がなくて振り回される感じだ?」 「まさにそれ。ずっとそんな感じかも」 黒髪にして眼鏡をかけるだけで あんなに大人っぽく見えるなんて知らなかった。 口笛は吹けないくせに ピアノは弾けるなんて知らなかった。 年齢を偽ってまで夜バイトしなきゃいけない理由も、咲田さんにごめんなさいしないどころか こんな時間に一緒にいる理由も。 私は悠君のこと、ほんとは何にも知らないんだ。 「でも、そんな付き合いの長い沙羅ちゃんに内緒にしてるなんて、何か理由があるんじゃない? きっとそうだよ」 「……そうなのかな」 雅ちゃんにさとされて、あのとき自分はなんて酷いことを言ってしまったんだろうってうなだれてしまった。 変装して、そのうえ年齢まで偽って夜遅くまで働くのには、やっぱり何か理由があるのかも。 もしかしてものすごく、お金に困ってたりして。悠君のパパの会社、とっくに倒産してたりして。
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