黒髪王子と夜の街

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「とにかく電話したら? きっと心配してるよ?」 「うん、でも……」 あなたのことなんて知らない。 そう言ってしまった。 思い切り手を振り払ってしまった。 あんな酷いことを言っておいて、図々しく電話なんかできるわけがない。 「とにかく、今日は帰った方がいいね。電話じゃなくてちゃんと顔見て話したほうがいいよきっと。京子には話しとくから」 「うん、そうする。雅ちゃんありがとう」 雅ちゃんの優しさに励まされて、精一杯笑ってみた。 雅ちゃんは途中お友達からお誘いが入って改札前で別れることになった。私は改札をくぐろうとして、やっぱりくぐるのをやめた。 大きな柱にもたれて空を見上げたら、夜が更けても街が明るすぎるせいか月も星も見えなかった。 知らない街、慣れない駅。 通りすぎるのは他人ばかりで、 夜の喧騒は私の不安を掻き立てた。
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