442人が本棚に入れています
本棚に追加
「ママ、俺にも味噌汁ちょーだい」
「はいはいどーぞ。お汁だけじゃダメよ? ご飯もおかずもサラダもヨーグルトも果物もグラノーラもヤクルトもね。育ち盛りだもん。蜂蜜なめてく?」
「朝御飯の量えげつないし全力でおばちゃんだね」
あんまり口うるさいと毒も吐きたくなるよね。
「でも沙羅ママのご飯美味しいし、俺これから太らなきゃいけないからちょうどいいよ、その量で」
悠君がママに極上のスマイルを見せたから、睨まれなくてすんだ。
「もう悠君ったら朝から嬉しいこと言ってくれちゃってママ幸せ! でもさ、なんで太る必要があるの?悠君スタイルいいのにもったいないよ?」
「スタイルとかどーでもいい! 大好きなあの子の理想の男になりたいだけだから」
「なにそれ! なんかママきゅんきゅんしちゃう!」
悠君とママは果てしなく気が合うらしい。
二人がしゃべってるとまるでガールズトークなんだもん。
盛り上がっちゃって私が入り込む隙もない感じ。
てか悠君、私が太め好きって思い込んでない?
ご飯を食べ終えて、歯磨きして軽くメイク直しても、まだふたりの恋愛トークは尽きてない。
「あのぉ、先行きます。悠君ごゆっくり」
一緒に登校するのが目的じゃなかったのかぁ。目的は美味しい朝御飯とママとのトークなんだな。やっぱりいろいろ期待するだけ傷つきそう。
ほんとに置いてっちゃうもんね。
ふぅ、と小さなため息が出た。
玄関でローファーに片足を突っ込むと、隣には悠君の靴。
足までこんなにサイズ違うんだ。
胸がぎゅっとなる。
悠君は、17歳の男の子なんだよね。
最初のコメントを投稿しよう!