神様がいない国。

2/3
前へ
/3ページ
次へ
石には霊力が宿る。 石が割れないように、そうっと持ち上げる。 魂の記憶?とでも云おうか。 「何か、見せてくれるの?」 見せて。 石には意志が宿る。 そこには、この無機質な星の隣で何とも美しい、馬頭星雲がきらきらと目まぐるしく働きながら、生きていた。 やっぱり生きることをやめてしまったこの、石ころ星には、なんの意志があったのか、ただ思うのは、なんにもない、ということの、尊さを少女は賢いので、わかっていた。 美しい、そう、美しい。 なんにもないのに。 なんにもないから、他の星々の世界があんなにも、美しく見えるのか、と思う。 ありがとう。 この石ころ惑星には、意志がない。無機質なのは、そのせいで、眠くなった。 だから、地球には、お寺があったのだろう。 私は、伽藍堂のようなきらびやかなものはいらない、と思った。 ここでなら、宇宙の塵になれる、とも思った。 私はこの何もない無機質な星を美しい星と呼んだ。 そうして、長い長い旅路がやっと、終わった。 少女の長い旅は終わった。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加