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 なんて思っていたのは、つい二週間程前までだ。人は簡単に変わる。変わってしまう理由として代表的なのは、カネ。あともう一つは、恋人の存在に他ならない。  つまりは、こんなあたしにも、彼氏ができたのである。恥ずかしながら、こんなことは大学生のとき以来だ。当時のあたしは、いろんな意味で純粋無垢だったけれど、大学を出てから数年経った今は、しばらく掃除していないエアコンのフィルターみたいに、すっかり薄汚れてしまった…と、自分では思っている。だからこそ、こんなあたしのどこを好いてくれたのか、それが気になって仕方がない。  彼は、同じ会社の、違う部署で働いている。年齢は、あたしのひとつ下。だけれど、もうすっかりタメ口で話してくるし、そんなこと、あたしは一ミクロンも気には留めない。彼の何もかもが、狂おしいほどに愛おしいからだ。特別かっこいい見た目はしていなくても、心の奥底で何かが突き動かされる、そんな雰囲気というか、オーラを放っていたのだ。  会社の飲み会で偶然に隣同士になった。あたしたちの周囲は、みんな仲のいい同僚と隣同士で座っていたらしくて、必然的にあたしと彼は誰とも喋ることができなくなってしまった。なんかそんなに楽しくないすね、料理もたいしてウマくないし。そんなことを、ぼそっと口走った彼が可笑しくて、あたしは思わず腹を抱えて大ウケしてしまった。それからちょくちょくメールをしたり、休みの日に出かけたりするようになって、今の仲になった。言いだしっぺは、珍しく、あたしだった。
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