イーオーティー

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イーオーティー

 ネットで調べたところによれば、一月半ばだというのに東京は最高気温が一五度近くあって、那覇に至っては二〇度をやすやすと超えているのだそうだ。それを考えると、同じ国の天気だというのに、さもそれが当然だとも言いたげなほどに毎日氷点下を下回り、あまつさえ雪なんていうものが街を埋め尽くすこの北の大地は、ある意味で異常なのではないか…と俺は考えた。これで夏は涼しくカラリとした気温で過ごしやすいというのならば話は別だけれど、北海道に避暑にやってくるなんてことは、この地球温暖化が叫ばれて久しい昨今、あまり意味のあることとは思えない。札幌はもちろんとしても、帯広や旭川などのように遠くへ行ったところで、結局は真夏日を観測する日が多いのだ。北海道内でも稚内や釧路などは話は別だが、それ以外の場所など、身体にまとわりつくようなムワッとした湿気がないだけで、気温が高いのは本州のそれとさして変わりがないのである。  窓の外を見れば、遠くに広がる日本海は、重い灰色の曇り空と相まって、海の寒々しい濃紺がよりその冷たさを際立たせているように見える。手前側には、手で砂をかき集めたみたいに、海沿いに大小の建物が密集して建つ、この港町の姿がある。とはいえ、この街に住みながらこの大学に通ってくる学生というのは、実はそれほど多くない。在学生の半分近くが札幌圏の高校から進学してきているし、それでなくとも全学生の大半は札幌からJRに乗って、毎日一コマ九〇分の講義を受けにやってくるのだ。俺も例外ではなくて、出身は札幌ではない北海道の田舎だが、札幌の片隅にくそぼろいアパートを借りて、そこから列車通学をしている。
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